創作作品展示室

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短編 双恋歌 雪奈×澪【秋風熱く、ぬくもりに】

※百合ものです。

 

短編

双恋歌 雪奈×澪
【秋風熱く、ぬくもりに】

 夜闇が迫る時間は日に日に短く、逢魔が時か誰そ彼時か、茜の模様は彼女の瞳をも染め上げる。何においても輝く彼女は、なお美しく、ともすれば絵画でも見ているように雪奈の目には映る。
 澪には心に決めた人がいる。それを承知の上で雪奈は今も叶わぬ想いを寄せている。けれど不思議と苦しいと思うことはない。悲しいと嘆くこともない。ただ、愛しい彼女が自分を親友と思っていてくれるならば、それだけで幸せなことだった。

「澪。お待たせ、帰ろうか」

 そうして今日も平然と呼びかけ、彼女の柔い身体を抱きしめる。一見すれば、仲のいい友人同士のスキンシップ。実際、澪はそのように思っていることだろう。――同性同士であるゆえに、許されるこの触れあいを。雪奈はけれど、少しずつ後ろめたさも抱いていた。どうしたって、通じ合えない。元より、彼女はそのような不埒な人間ではないし、そういうところに惹かれているのだから。ゆえに雪奈は今日も微笑む。いずれ来るだろうその時までは、必ず自分が傍にいよう。愛する彼女を、自分が守り続けようと。
 何も知らない澪は困ったように微笑みながらも、その薄紅の唇から紡いでくれる。

「何かご機嫌ね、雪奈。いいことでもあった?」

 まさに今、いいことをしているとは言わず。雪奈は曖昧に笑みを返すのみで、それきり黙って澪の手を引き歩き出す。
 寒くなる時期を控え冷えたその指先を、彼女のぬくもりで再び溶かす。暖かい、それだけで雪奈はずっと、笑顔だった。

25.11.2018

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